月曜日
かりかりかり…
「(ぴたっ)」
何だろう。さっきから視線が痛い。
ノートから顔を上げて、横を見ると、
「か、柿本君…!!」
柿本君がいました。
柿本君は私の隣の山川君の椅子に座って、
こっちを見ていた。
「え、えと…(き、気まずい…!!)」
「次女子体育だけどいいの?」
「えっ」
えっ、(まわりきょろきょろ)わぁ!ホントだ!(誰もいない)
わーん教えてくれたっていいじゃない!(泣)
いそいで体操服の入った袋を持ち、走っていった。
*
「…(何かいてんの)」
覗き込むとそれは漫画だった。
「…(意外と上手い)」
パラパラとページをめくる。
「…これって」
と骸様?
ヒロインはだった。
それにしても自分をヒロインにするなんてどうなんだ。
「…」
…そうか、
は骸様が好きなのか。
何かいけないものを見てしまった気分になり、屋上へと向った。
火曜日
かりかり
昨日から柿本君は私の書いているものを眺めている。
漫画書いてるって知ってるんだろうなぁ。
きっとこの前の体育の時間に。
うう…なんか弱み握られたみたいだ。
はぁ。
もういいや、気分晴らしに帰りに画材店によって行こう…。
*
のノートはどうやら順調に埋まっているらしい。
オレが来た時、オドオドしたけど、
その内漫画を描くのに集中してしまっていた。
そういえば以前、は仲がいいらしいクラスメートに
「漫画を書いてるとご飯を食べるのを忘れる」
と言っていた記憶がある。
…漫画、好きなんだな。
水曜日
かり…かりかり…
「」
「ふえっ!え、何?」
「…コレ」
そう言って柿本君が渡してくれたのは、焼きそばパンだった。
「?」
「昼飯」
「え、もうご飯!?」
い、いけない!四時間目からずっと書いたまんまだった。
せ、先生にばれたかも…
「…気付いてないと思うよ」
「え!(せ、先生に!?)」
なんで分かるんですか、柿本君。
「顔に出てる」
「あ…さいですか…」
恥ずかしい…。
*
どうやら集中すると食べることを忘れると言うのは本当らしい。
授業中も書いていたがばれなかったのは幸運だと思う。
焼きそばパンを渡して、隣の席に座る(ココの席って誰だっけ)。
は、焼きそばパンをほおばりつつ、ペンを動かしていた。
…行儀悪い。
木曜日
かり…かり…
「ねぇ」
「うえっ?」
「…なんで俺が話し掛けると奇声出すの」
び、び、びっくりするから。
そういったら…呆れた視線で見られた。
うう…。
「って骸様好きなの?」
「え(っていうか骸様?)」
な、何をおっしゃいますか!
え、な、なんで?
「やっぱそうなんだ」
「…」
やぁぁ!話勝手に進んじゃった!
…もういいやぁ。諦めよう。
「そ、それより、
じゃなくて、でいいよ!」
「じゃあ「柿本君は千種くんって呼ぶから!」
ね!と半ば強引にそう言った。
*
…じゃなかった、
とその後、メルアドを交換した。
その後はいろいろ聞かれた(骸様のこととか)。
やっぱり好きなんだな。
そう思ったら、すこし寂しくなった。
金曜日
かりかり…
「やっぱ今週中に終わらせるのは無理だったなぁ」
「…」
「あ、ねぇねぇ、千種くんこれから暇?」
「別に暇だけど…」
あーよかった!
この一週間で千種君ととっても仲良くなった(と思う)。
だから、私の書いた漫画を見てもらおうかなぁと思ったんだ。
えへへ。
*
駅前の小さなケーキ屋。
そこに俺とはいた。
は鞄から、いつも書き込んでいるノートを出すと、俺に渡す。
「感想聞かせて!」
って…少女漫画読む趣味は無いんだけど…
まぁ、絵の感じとかだったら、感想を言える。
主な登場人物はと骸様。
なんとなく今風の少女漫画だった。
「ねぇ、面白かった!?」
…そんなに期待されても困るんだけど。
それにそんな事だったら、骸様に見せなよ。
段々と何故か腹がたってきて、
俺はにノートを押し付けると、
何か言っているに視線も合わさずに
店を出て行った。
土曜日
カリ…
「なんで千種くんいきなり怒っちゃったんだろう」
なんかしちゃったかなぁ。
ああ。泣きたい。
「大体六道君は好きじゃないよ…」
どっちかっていうと、千種君が好きだった気がする。
なんていうか、一緒に居て、喋って、雲みたいにふわふわした気持ちになれた。
「私千種くん好きだったのかなぁ…?」
そう言いながら、そうなんだと分かった。
好きだったんだ。
友達にも、家族にも現れないような感覚だった。
少女漫画にあるきらきらしたトーンみたいな気持ち。
「、」
少女漫画は大体いつもうまくいく。
でも現実はわからない。
けど、
「やってみる…!!」
いつだって、主人公は前向きなんだ。
そんな彼女達みたいになりたい。
真っ白とはいえなくても。
*
「…」
やってしまった。
感情の勢いに任せて、勝手に怒って勝手に帰った。
「はぁ」
「柿ぴーどうしたんれすかー」
「うるさい」
「キャン!」
一発、犬の頭に拳を落とした。
その時、ポケットの中の携帯が、ヴーヴーと震えだした。
「?」
メール。
からだ。
【この前は怒らせちゃってゴメンね。
明日あいてるかな?あいてたら、学校近くの公園にきてください】
…は悪くないのにな。
日曜日
「あ、千種君!」
どうしよう、緊張する。
千種君が日曜日なのに制服、とかそういうのは気にならないくらい。
ほら、考えてきた言葉を言わなきゃ。
「あの、ね実は漫画のラストを書き換えたから、
見て欲しいんだけど」
そういって、ノートを渡した。
*
ラスト?
俺は不思議に思いながら、ノートをめくった。
あのラストは俺でも分かるくらい綺麗だった。
丁度告白する場面で、
告白すると、骸様は笑って、
で、「はい」って答えるんじゃなかったっけ?
ラストを見た。
「?」
台詞が無い。
後人物が変わってる。
骸様じゃなく、
立ってるのは…
俺?
「ちくさくん、だいすきですっ!」
がはじけたように叫んだ。
驚いてすぐには気付けなかったけれど、
の着ている服は、漫画と同じ。
よく見ると、背景も公園のそれだった。
すこし早い心臓を押さえながら、
に向き直る俺。
骸様のようにかっこよくない。
上手く返事なんて出来ない。
でも…
「俺も、好き」
嗚呼運命的
起承転結!
(千種、その方は誰です?)(か、彼女のです!)(彼氏の柿本千種です)(…)
07.09.12
柿本企画