月曜日

かりかりかり…

「(ぴたっ)」

何だろう。さっきから視線が痛い。
ノートから顔を上げて、横を見ると、

「か、柿本君…!!」

柿本君がいました。

柿本君は私の隣の山川君の椅子に座って、
こっちを見ていた。

「え、えと…(き、気まずい…!!)」
「次女子体育だけどいいの?」
「えっ」

えっ、(まわりきょろきょろ)わぁ!ホントだ!(誰もいない)
わーん教えてくれたっていいじゃない!(泣)

いそいで体操服の入った袋を持ち、走っていった。



「…(何かいてんの)」

覗き込むとそれは漫画だった。

「…(意外と上手い)」

パラパラとページをめくる。

「…これって」

と骸様?

ヒロインはだった。
それにしても自分をヒロインにするなんてどうなんだ。

「…」

…そうか、 は骸様が好きなのか。
何かいけないものを見てしまった気分になり、屋上へと向った。





火曜日

かりかり

昨日から柿本君は私の書いているものを眺めている。

漫画書いてるって知ってるんだろうなぁ。
きっとこの前の体育の時間に。

うう…なんか弱み握られたみたいだ。

はぁ。
もういいや、気分晴らしに帰りに画材店によって行こう…。



のノートはどうやら順調に埋まっているらしい。

オレが来た時、オドオドしたけど、
その内漫画を描くのに集中してしまっていた。

そういえば以前、は仲がいいらしいクラスメートに
「漫画を書いてるとご飯を食べるのを忘れる」
と言っていた記憶がある。

漫画、好きなんだな。





水曜日

かり…かりかり…


「ふえっ!え、何?」
「…コレ」

そう言って柿本君が渡してくれたのは、焼きそばパンだった。

「?」
「昼飯」
「え、もうご飯!?」

い、いけない!四時間目からずっと書いたまんまだった。
せ、先生にばれたかも…

「…気付いてないと思うよ」
「え!(せ、先生に!?)」

なんで分かるんですか、柿本君。

「顔に出てる」
「あ…さいですか…」

恥ずかしい…。



どうやら集中すると食べることを忘れると言うのは本当らしい。
授業中も書いていたがばれなかったのは幸運だと思う。

焼きそばパンを渡して、隣の席に座る(ココの席って誰だっけ)。

は、焼きそばパンをほおばりつつ、ペンを動かしていた。
行儀悪い。





木曜日

かり…かり…

「ねぇ
「うえっ?」
「…なんで俺が話し掛けると奇声出すの」

び、び、びっくりするから。
そういったら…呆れた視線で見られた。
うう…。

って骸様好きなの?」
「え(っていうか骸様?)」

な、何をおっしゃいますか!
え、な、なんで?

「やっぱそうなんだ」
「…」

やぁぁ!話勝手に進んじゃった!
…もういいやぁ。諦めよう。

「そ、それより、 じゃなくて、でいいよ!」
「じゃあ「柿本君は千種くんって呼ぶから!」

ね!と半ば強引にそう言った。



…じゃなかった、 とその後、メルアドを交換した。
その後はいろいろ聞かれた(骸様のこととか)。

やっぱり好きなんだな。
そう思ったら、すこし寂しくなった。





金曜日

かりかり…

「やっぱ今週中に終わらせるのは無理だったなぁ」
「…」
「あ、ねぇねぇ、千種くんこれから暇?」
「別に暇だけど…」

あーよかった!
この一週間で千種君ととっても仲良くなった(と思う)。

だから、私の書いた漫画を見てもらおうかなぁと思ったんだ。
えへへ。



駅前の小さなケーキ屋。
そこに俺とはいた。

は鞄から、いつも書き込んでいるノートを出すと、俺に渡す。

「感想聞かせて!」

って…少女漫画読む趣味は無いんだけど…
まぁ、絵の感じとかだったら、感想を言える。

主な登場人物はと骸様。
なんとなく今風の少女漫画だった。

「ねぇ、面白かった!?」

そんなに期待されても困るんだけど。
それにそんな事だったら、骸様に見せなよ。


段々と何故か腹がたってきて、
俺はにノートを押し付けると、
何か言っている視線も合わさずに
店を出て行った。





土曜日

カリ…

「なんで千種くんいきなり怒っちゃったんだろう」

なんかしちゃったかなぁ。
ああ。泣きたい。

「大体六道君は好きじゃないよ…」

どっちかっていうと、千種君が好きだった気がする。
なんていうか、一緒に居て、喋って、雲みたいにふわふわした気持ちになれた。

「私千種くん好きだったのかなぁ…?」

そう言いながら、そうなんだと分かった。
好きだったんだ。
友達にも、家族にも現れないような感覚だった。
少女漫画にあるきらきらしたトーンみたいな気持ち。

「、」

少女漫画は大体いつもうまくいく。
でも現実はわからない。

けど、

「やってみる…!!」

いつだって、主人公は前向きなんだ。
そんな彼女達みたいになりたい。
真っ白とはいえなくても。



「…」

やってしまった。
感情の勢いに任せて、勝手に怒って勝手に帰った。

「はぁ」
「柿ぴーどうしたんれすかー」
「うるさい」
「キャン!」

一発、犬の頭に拳を落とした。
その時、ポケットの中の携帯が、ヴーヴーと震えだした。

「?」

メール。
からだ。

【この前は怒らせちゃってゴメンね。
明日あいてるかな?あいてたら、学校近くの公園にきてください】

は悪くないのにな。





日曜日

「あ、千種君!」

どうしよう、緊張する。
千種君が日曜日なのに制服、とかそういうのは気にならないくらい。
ほら、考えてきた言葉を言わなきゃ。

「あの、ね実は漫画のラストを書き換えたから、
見て欲しいんだけど」


そういって、ノートを渡した。



ラスト?

俺は不思議に思いながら、ノートをめくった。
あのラストは俺でも分かるくらい綺麗だった。

丁度告白する場面で、
告白すると、骸様は笑って、
で、「はい」って答えるんじゃなかったっけ?

ラストを見た。

「?」

台詞が無い。

後人物が変わってる。

骸様じゃなく、
立ってるのは…





俺?





「ちくさくん、だいすきですっ!」

がはじけたように叫んだ。
驚いてすぐには気付けなかったけれど、
の着ている服は、漫画と同じ。
よく見ると、背景も公園のそれだった。


すこし早い心臓を押さえながら、
に向き直る俺。

骸様のようにかっこよくない。
上手く返事なんて出来ない。

でも…





「俺も、好き」







(千種、その方は誰です?)(か、彼女のです!)(彼氏の柿本千種です)(…)






07.09.12
柿本企画